蜜蝋は蜜蜂が巣を作るために、食べた蜜を体内で変化させ、お腹の分泌腺から分泌する蝋のことです。
蜜から蝋へと変わるこの不思議な仕組みは未だ詳しく解明されていませんが、蜂たちはその蝋を使って巣を作ります。
触角の長さに六角形に積み上げ、集めた蜜を蓄えるためや、子どもたちを守るために、雨をはじく巣を作っていくのです。
透明な蝋で作られた巣は、蜂たちが食べた蜜の中に混ざっていた花粉の色に自然に染まっていきます。
そんな蜜蜂の巣を収穫し加熱してしぼり、精製したものが蜜蝋-BEESWAX-製品の原料となります。
蜜蜂と人間の付き合いは長く、蜜蜂がもたらしてくれる甘くて栄養価の高い蜂蜜は、古くより人々の暮らしにかかせないものでした。
蜂蜜の副産物である蜜蝋の歴史も同様で、養蜂技術の発達した紀元前の古代エジプト文明では、すでに様々な用途に使われていました。
蜜蝋を使った灯明はもちろん、ミイラの保存などにも使われていたようです。
ギリシャ神話にも蜜蝋の話がよく出てきます。
また、キリスト教では厳かな灯りをともす蜜蝋の蝋燭はミサにかかせないもので、修道院では蝋燭を作るために養蜂をおこなったりもしていました。
日本では奈良時代に仏教の伝来とともに、中国から蜜蝋の蝋燭が渡ってきました。
当時はとても貴重な品でしたが、やがて江戸時代後期には養蜂技術も発達し、そこで採れた蜜蝋は日本人の生活にも広く使われるようになります。
大自然の恵み、蜜蜂からの贈りものである蜜蝋は、今も様々なものに使われています。
キャンドルやワックスはもちろん、クリーム、乳液、リップクリームなどの化粧品、錠剤や塗り薬などの医薬品、鉛筆やクレヨンなどの文房具などなど。
特に化粧品においては天然の乳化剤として活用されています。
蜜蝋の主成分はワックスエステル(ろう成分)ですが、ワックスエステルは人間の皮脂の中にもある安全な油脂です。
安全で肌になじみやすく、保湿力にすぐれているため、化粧品の原料として多く用いられているのです。
また蜜蝋と言えば、家具や楽器などの木製品の保護、艶出しにも多く使われていますが、最近では蜜蝋を主成分とした床用ワックスがその高い安全面から、幼い子どもたちが居る家庭や、保育園などで、徐々に注目を集めています。
蜜蝋を使った製品でもっとも代表的なものと言えばキャンドルです。
蜜蝋キャンドルに火を灯すと、やさしい赤みを帯びた炎がゆっくりと燃えていきます。
キャンドル自体の色も灯りに透かさ蜜蜂たちが集めてきた自然な花粉の色です。
揺らめく炎を見つめていると「1/fゆらぎ」という、人をリラックスさせる効果が現れるようです。
自然の中の小川のせせらぎや雨音などと同じ様に、不規則なゆらぎには人をリラックスさせる不思議な魅力があります。
またその炎はマイナスイオンを発生させ、空気を浄化するとも言われています。
環境にやさしい炎は、パラフィン(石油)系の蝋燭と違い、ほとんど煤が出ず空気を汚しません。
夕食時や、一日の終りなどに、この温かい灯りを味わってみるのはいかがでしょうか?
きっと不思議なリラックス効果で、ストレス解消や、安眠などがもたらされるかもしれません。